国語や算数の文章題だけじゃない!学習のあらゆるところに影響を及ぼす推論機能
目次
- ○ 国語や算数の文章題だけじゃない!学習のあらゆるところに影響を及ぼす推論機能
- ・推論機能とは
- ・もっとも身近な認知機能の1つ
- ・推論機能が弱いと言葉を適切に把握できない
- ・算数の図形が苦手な理由
- ・推論機能が苦手な子は、まずは知識や意味、方法の獲得を優先に
国語や算数の文章題だけじゃない!学習のあらゆるところに影響を及ぼす推論機能
こだわり特性をもつこの中にはしばしば「推論機能が弱い」というようなことが言われます。
この推論機能は名前からして推理や複雑な論理的推理を思い浮かべるかもしれませんが、実際は
もっと身近でシンプルな機能です。
身近であるということはそれだけ大切な機能ということでもあります。
今回はその推論機能についてまとめました。
推論機能とは
視覚的に得られた情報から背後関係や前後の関係、あるいは意味や表情の読み取りなど、多岐にわたって行われている認知活動の1つです。
ASDの傾向に推論機能の弱さが認められますが、ADHDのうち不注意優勢型であっても似たように推論機能の弱さが認められます。
推論機能は推理する力だけでなく、適切な推論を立てる力とも関係します。
もっとも身近な認知機能の1つ
推論機能は私たちが生活を営む上で身近な認知機能の1つと言えます。
例えば道を歩いていて横断歩道の信号が点滅し始めると「間もなく赤信号だから渡らないでおこう」と判断します
また、学校の準備をしていて「明日は体育があるから体操着を忘れないようにしよう」と考えます。
こうした身の回りのちょっとした未来予測にも推論機能が働いていると言えます。
では、反対に推論機能が十分に機能しないとどのような判断になるかというと
「信号が点滅した!」
「明日は体育だ」
という時点で理解がストップします。
これはあくまで一例ですが、このような現象を「先の見通しが立たない」と言います。
これだと次の自分の行動や周りの動きが判断できないのでパニックになりやすいですよね。
知覚推理はこれらの中でも目から得られる情報を推理して文脈を形成したり背後関係を確認したりする力と言えます。
では、これらが学校の勉強ではどのようにつながるのかを見ていきましょう。
推論機能が弱いと言葉を適切に把握できない
私たちが普段接している文章には漢字と平仮名とカタカナが含まれていて、それらを適切なまとまりに区切ったり読み方を類推して
日々文章を読んでいます。
ところが推論機能が弱いと次のような学習困難を引き起こします。
①文章のまとまりを作りながら読めない
ひらがなで構成された文章だと特に顕著なのですが、自ら推理してまとまりを作ることが苦手です。得意な子は先々の文章やなんとなくのニュアンスでまとまりを作りながら読むことができるのですが、推論機能が弱い子の場合はまとまりを作りながら読み進めることが苦手なのです。
②漢字(熟語)から意味や読み方を推測できない
熟語が登場してきた場合、その熟語の読み方を「音訓」から類推して発音したり、これまで聞き覚えのある言葉を思い出して「これかな?」と推測しながら読んでいます。
これは大人になってからも同じで本当に読み方が分からなければ調べるでしょうけれど、そうでない場合はなんとなくで読めることが多いのです。
また、その熟語が表す意味も文脈からなんとなく理解します。それを「この言葉はこんな場面で使うのね。」というように一般的な事柄として理解し、自分でも実際に使うようになります。
ところが推論機能が弱い場合、読み方も推論が立たなければ意味も漢字から考えることが苦手になります。すると「読み方が分からないから意味が分からない」「意味が推測できないから内容が理解できない」というような結果につながります。
これだけでもなかなか学習における難しさがありそうですよね。
算数の図形が苦手な理由
推論機能、または知覚推理は算数でいうと図形問題にその苦手さが表れます。例えば「三角形を二等分に」というときれいに2つに分けるための線分を考えますが、そもそも「等しく」の意味が分からなければきれいに分けることができません。
また、「等しく」が分かっても横に分けたり縦に分けた後の図形を推測できないため、「まずは線を引いてみる」という事態が起こります。
ただ、この「まずは線を引いてみる」は往々にして失敗します。
結果的に失敗が連続し「もうわからない」「やりたくない」につながってしまうのです。
推論機能が苦手な子は、まずは知識や意味、方法の獲得を優先に
知覚推理は少々乱暴にいうと「見たままに判断する」ことです。だから見えていない情報やこれから起こりうる出来事について考えて行動することに苦手さを抱えています。
ただ、推論機能が全く働かないということはおそらくほとんどないでしょう。勉強が苦手になる子の多くはこうした苦手さがあるにもかかわらず「考えれば分かる」「調べれば分かる」ということを押し付けられたがために起こっていると言えます。
ただ、そもそも何をどう考えればよいか分からないし、失敗したら失敗したで何が原因かも分からない中ではどれだけ頑張っても
報われようがありません。
そのため推論機能の苦手さについては早期に理解を示し、まずは知識や意味、そして適切な方法の獲得につなげることが自信につながり可能性を広げます。
理解ある指導が子どもの未来につながります。